密厳院のお七地蔵

 芝居や舞踊で“八百屋お七”の話は皆さん聞いたことはありますよね?その有名な語り継がれている実話。このお話は、八百屋太郎兵衛の娘“お七”という、娘さんの話。自宅が駒込の大円寺から出た家事によって、焼け出され小石川の円乗寺に非難していた時のお話です。

 『火事と喧嘩は江戸の華』と、妙な自慢を江戸っ子達がしたように、当時の江戸の木造での長屋建築は、火事が多かったのです。そして、その火事の規模は大変大きな物になっていたようです。お七さんの家が焼けた火事も、大名屋敷が23、旗本屋敷が30余、寺院24ヶ寺を焼くという大火事でした。そんな、お七さんが避難先の円乗寺で恋をします。お相手は、その寺の小姓で吉三郎くんでした。ところが、家が建て直され、お七さんは元の自宅に戻る事になってしまいます。でも…お七さん、どうしても吉三郎くんの事が忘れられず、会いたい!想いが募るばかり。『吉さん恋しさ!吉三郎様に会いたい!会うためには、どうしたらよいのだろう?』と、携帯電話も無く、自由に外泊も出来ないこの時代の娘さん、一生懸命に考えました。『そうだ!また火事になって円乗寺に非難できれば会えるのではないか!』と。放火…を、思いついてしまいます。そして、家に火をつけて放火の罪で捕えられてしまったのでした。この当時の火つけ(放火)は、大罪。何もかもが木造だから、大きな被害を出す事で市中引き回しの上、鈴ヶ森で火あぶりの刑!と、決まりました。しかし可憐な娘の一途な恋心を知ったお奉行様。お七に尋ねます。『お七、そのほう15歳であったな?』と。当時は16歳が成人の為、16歳以上は死罪、15歳以下は遠島という処置が取られていたからなのです。しかし、お七は答えます。『いいえ、私は16になります』

 救いの手を差し延べた、お奉行さまの言葉に、お七は必至になって16歳ですと、繰り返したのでした。お奉行様も、お七を助ける事が出来ず、お七は鈴ヶ森の処刑場で火あぶりの刑になったのでした。このお七の一途な、そして悲しい恋路の最後に、多くの江戸の人は哀れんだそうです。

 密厳院(大森北3-5-4)には、お七の3周忌の仏事供養の為に、小石川の念仏講中の人たちが造立した、お地蔵様が祀られており、石造りの丸彫りの地蔵様は“お七地蔵”と、呼ばれています。

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